アムステルダムのトークイベント”アウトルック:ジャパン2020”

12月12日、オランダ国際文化協力機関 DutchCulture主催によるトークショー "アウトルック:ジャパン2020”がアムステルダムのPakhuis de Zwijgerで開催されました。同会にMONO JAPAN代表の中條永味子も、他の4名のスピーカーとともに壇上に招待されました。
 
ここではこの日に行われたインタビューの内容を公開しています。次回5年目を迎えるMONO JAPANの軌跡、回を重ねるごとの変化や成長、日本人の団体としてオランダで継続する意義などを読み取っていただければ幸いです。
 
 
司会者:MONO JAPANも4回目のイベントを終え、アムステルダムでの毎年恒例のホットなイベントとして認知されています。まだMONO JAPANのことを知らない皆さんに、MONO JAPANのことをご紹介いただけますか? 
 
中條:MONO JAPANは日本のプロダクトの展示会でありマーケットプレイスです。私たちは日本製品の取り扱いに興味を持つ欧州バイヤーをご招待しています。同時にマーケットプレイスとして、一般のお客様が日本から来た製品をMONO JAPANにて購入することができます。MONO JAPANの機会は、日本のメーカーの方々にとっての欧州でのビジネスの玄関口として活用いただいています。同時に欧州の日本製品のファンにとっては、毎年セレクトされた良質で特別な日本のプロダクトに出会える機会を提供しています。この二つのビジネスの機会作りと共に、レクチャーや展示、ワークショップなどの文化イベントもイベント期間中に運営しています。
 
MONO JAPANは2016年2月にロイドホテルにて第1回目を開催し、今年の2月で第4回を迎えました。 これまでMONO JAPANを運営する中で、日本のメーカーとオランダのクリエイターの間に立ち、いくつかのコラボレーションを創造しました。例えば2017年には、オランダで活躍するクリエイター、クリスティン・メインデルツマがオランダのキッチンでおなじみのティータオルをMONO JAPANのロゴを使ってデザインしました。これを播州織の阿江ハンカチーフでオーガニックコットンを使用して製造しました。また2018年にはアムステルダムの人気ブランドのボネ・スーツともコラボレーションを行いました。ヤンマ産業はらっぱの会津木綿を2種、宝島染工の藍と泥染の2種、匠工芸の博多織3種、6% DOKIDOKIの柄物を1種、この4社の生地でボネ・スーツを作り、オープニングレセプションでファッションショーを行い披露しています。
 
イベントを継続する中で、日本とオランダのクリエイティブシーンをつなげていくことが、MONO JAPANの重要なミッションのひとつになってきています。ここが他の展示会やイベントにはない私たち独自のユニークな点です。
 
 
司会者:MONO JAPANはオランダにおける日本のコンテンポラリーな工芸にスポットライトを当てる素晴らしいプラットフォームとして機能して、この2国間では様々な事柄が生み出されています。今年はMONO JAPANはアーティスト・イン・レジデンスプログラムも開始しました。これについてお話いただけますか?
 
中條:MONO JAPANを続けてきたこの数年間で、私たちはとても特殊な立ち位置にいることに気づきました。日本全国の伝統工芸やものづくりの産地とのネットワークが徐々に出来上がってきたんです。日本の産地では常に作り手の厳しい現状について耳にしますが、一方でオランダでは日本のプロダクトは非常に人気が高くなり、ついにはオランダのクリエイターのデザインにもその影響を見るほどです。私たちの方へもオランダ人クリエイターから頻繁に問い合わせが届きます。
 
このような状況から、私たちはオランダのクリエイターと日本のメーカーを上手にマッチングすることで、双方にとってとても良い機会になると考えるようになりました。私たちはまず日本のお付き合いのある産地やメーカーの方々に、オランダのクリエイターとの協働に興味がないか聞いて回りました。日本での受け入れ先を見つけることは難しいことではありませんでした。 
 
会津漆器、京都の神義装束、島根の石州和紙の3つの受け入れ先が決定し、私たちはこの3つの産地からの受け入れ承諾いただいた時点で、アーティスト・イン・レジデンスプロジェクトを実施しようと決めました。
 
オランダの助成団体や東京にあるオランダ王国大使館からのサポートが決定し、参加クリエイターをオランダ全国的に公募を開始、多くのご応募をいただきました。デザイナーの選抜には、オランダのデザイナーで日本での仕事の経験も豊富なイナマットサミラ・ボーンTime & Styleの吉田龍太郎社長に審査員となっていただきました。 
 
このプロジェクトでの成功の鍵は、マッチングであったと思っています。クリエイターを選ぶ際には、過去の経歴や仕事の質だけでなく、人格的な産地との相性も重要だと考えました。クリエイターがいくら優秀であっても、新しい土地の初めて知る技術、職人の言葉などに対するオープンな受け入れ姿勢がなければ、彼らとの協業は絶対にうまくいきません。 
 
今年のMONO JAPANで3名のクリエイターが選ばれ、彼らは3つの産地で素晴らしい経験をし、受け入れ先の方々の尽力もあり、全員が素晴らしいプロトタイプをたった2ヶ月の滞在で生み出しました。
 
オランダ大使館の後援により、レジデンスの最後にはクリエイター全員を集めて東京でプレゼンテーションを行いました。そこではプロトタイプを披露し、彼らは産地での2ヶ月の体験について語りました。
 
3名のクリエイターは現在はプロトタイプを実際に商品化できるように準備中です。次回のMONO JAPANでは彼らの商品を展示し、多くの方に披露する予定です。
 
 
司会者: MONO JAPANやアーティスト・イン・レジデンスは日本のメーカーや産地、職人の方々にとってどのような意味がありますか?彼らは彼らのその素晴らしい伝統工芸の技をオランダのクリエイターとの協業に用いるということにオープンなのでしょうか?
 
中條:日本の産地や職人は伝統的に製品の流通を問屋が担当していました。製造者は商品作りに専念し、問屋が広報やセールス、全国への流通を担当するという構造でした。しかし時代の変化からこのシステムも機能しなくなってきており、製造者の方々からは新しいセールスや流通方法の模索に関しての声が頻繁に聞かれるようになりました。
 
メーカーや職人の方々のものづくりには、伝統の技術や地域的慣習などが深く染み込んでおり、これにより彼らの素晴らしいクオリテォーの製品が作られるわけですが、これによりイノベーティブなアイデア着想の限界も生じてしまうと考えます。そして日本人は外国人の意見の方が国内の外部の人の意見よりも受け入れていただきやすい傾向があります。
 
このような理由でオランダ人クリエイターとの協業は日本の製造者の方々にも意義あるものだと言えるでしょう。しかし実際はそんなにシンプルにうまくいくものではありません。うまくいく秘訣は、あくまで双方がお互いを理解しようとし、お互いに対して尊敬を保つこと。これなくしては協業はうまくいかないと考えています。 
 
 
質問者:MONO JAPAN2020はどんなイベントになる予定ですか? 
 
中條:これまではずっとロイドホテルを私たちのホームとしてきました。しかしオーナーが変わり、私たちもロイドホテルを卒業して新天地を見つける時期だと感じました。多くの場所を訪問し検討した結果、 アムステルダム北部のNDSM-LOODSを会場に選びました。ここは古い造船場で、かつてのアムステルダムのオルタナティブなアートシーンを彷彿とさせる唯一の場所です。同時にこの場所は再開発真っ只中のホットなエリアで、毎回足を運ぶごとに新しいビルが建つような勢いです。多様なタイプの人も足を運び、クリエイティブなシーンもどんどんここに移ってきている。ダイナミックに変化を見せているこの地域のエネルギーを、私たちも愛しています。
 
2020年には 時期も8月末へと変更しました。理由としては単純に、NDSM-LOODSでの冬の開催は寒すぎるということです。8月末の開催時期は、ちょうど東京オリンピック後となり、多くの人が日本フィーバーで盛り上がった夏を締めくくる、夏の終わりのフェスティバルのようなイベントとして作れればと思っています。
 
NDSM-LOODSの会場はこれまでより大きく、さらに5周年ということもあり、さらに多くの出展者の方々に来ていただき、特別なプログラムも開催できればと考えています。 
 
 
質問者: 日本とオランダの間に立ち、MONO JAPANの運営する上で、どのような困難に遭遇することがありますか?またあなた自身オランダに住む日本人としてどのような困難を経験しますか?
 
中條:MONO JAPANでの挑戦はビジネス面が多いです。例えば、個人的には毎回のMONO JAPANで新しいプログラムを企画してみなさんに楽しんでいただきたい。しかし財政的にはこれは効率的ではありません。ビジネス的な成果に注力しすぎると、今度は文化的なアウトプットがおろそかになります。これを解決するため、今年11月に私たちはNPOを立ち上げ、継続的な文化プログラムの提供を可能にするような組織の構築中です。
 
また在オランダの日本人としては、困難にはよく遭遇します。私はオランダ語が流暢ではないため、多くの機会を見逃していると感じます。 ちょっとした情報にも語学力のためにリーチできないとか、オランダ人社会でのネットワーキングにより努力を要する、などです。しかし最近ではMONO JAPANも知られるようになってきて、オランダ人クリエイターからコラボレーションの希望などをよくいただくようになりました。ですので、日本人の私は、何事もオランダ人よりは時間がかかる、ということなだけだと思います。
 
私は二つの国の文化を知っていることで、よりたやすくアイデアが生まれると感じますし、オランダにいる日本人だからこそのメリットも多く感じます。近頃では日本文化のコンセプトがとても流行っていて、これをビジネスにするオランダ人をはじめとした日本人以外の方を多く見かけます。本当に面白い時代になったと思います。欧州にいる日本人として、絶え間なく日本からの本物を欧州の皆さんに出会っていただける機会を作り続けることも、私たちにとって非常に重要になってきていると感じます。